アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 他意はないのだろう。
 多分ディートリッヒ様のおすすめの店か、最近流行の店で買ってきたとか、そんなのだろう。
 ディートリッヒ様に限って、片思いの相手に渡すと恋が実るって噂のあれではないはずだ。

 数年前にご令嬢達を中心に流行り、今では王都を中心に女の子の間で流行っているおまじないのようなもの。ディートリッヒ様が知らないのも無理はない。

 ここは変な意味に捕らえずに美味しくいただくのが一番だ。
 箱の中に一緒に入っていたフォークでハートの中心部から二つに分ける。
 そこからベリーソースを含んだチョコレートソースが流れ出すと同時に、ぶわっと部屋中をチョコレートの香りが占領する。

 これは間違いなく美味しいやつ!

 そもそもディートリッヒ様の連れていってくれる店には外れが当たったことなど一度もない。きっと過去に私が幾度となくスルーした差し入れも美味しいものばかりだったのだろう。
 早く早く! と焦る口に、チョコレートソースが絡まったそれを一口頬張る。そしてもう一口。もう一口。チョコレートの甘さとベリーの酸味が合わさったフォンダンショコラは絶品で、なかなか手が止まらなかった。

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