アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 止まったのは運ぶものがなくなった時のことだった。


38.
「……先日はすまなかったわね」
 嵐の少女ことラティリアーナ様が再び私の前に現れたのはそれから数日が経ってのことだった。

 すまなかった、なんて言いつつもその顔に浮かぶのは不服の表情。
 おおかたディートリッヒ様に謝るようにと言われたのだろうことはありありと伝わってきた。
 けれどこうしてわざわざ謝罪に来るタイプは稀で、かつ先日の騒動もブラコンを拗らせただけだという。

「お気になさらず」
 だから本心からそう返したのだが、見事なまでに目の前の少女の顔は歪む。
 美少女ってこんなところで表情筋をフル活用していいのかしら? なんて思うほどに。
 私の見てきた歴代の美少女ぶちゃいく顔ランキングの堂々の一位を飾れるその顔に、私は思わず回りを見回した。
 この場にいるのは私とラティリアーナ様、そして彼女の従者だけである。つまりラティリアーナ様の不名誉なぶちゃいく顔情報の流出は逃れられたという訳だ。

 ふぅと胸をなで下ろし、再び目の前の人に向き直る。
 すると彼女は怪訝そうな表情へと切り替えていた。
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