アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
「はい。かしこまりました」――と返事をして、この時ようやく私はディートリッヒ様の家のメイドになるのだという事実に気づいたのだった。


4.
 そんな大失態を犯したことを私は昨日のことのように思っている。実際は二週間ほど前のことだけど、あれから日の進みが妙に早く感じているのだ。

 ディートリッヒ様を見送って、ダイニングルームへと戻るとベルモットさんがクルリと身体を反転させる。どうやらこの場所でアッシュ家の使用人になるための講義が行われるようだ。
 望んだことではないが、引き受けてしまったからにはしっかりとやり遂げる気でいる。

『常に責任感を持って行動すべし』
 これはメイド長のありがたい一言であり、私はそれこそが数年間、城で勤めて学んだ中で一番重要なことだと確信している。

 元より叶う確率など塵芥と同じかそれよりも小さなほどの確率だったのだ。
 ならば少しでもディートリッヒ様の力に、いや彼が今までと同じように暮らせるようにサポート出来ればいいな!

 そう思うと自然と身体に力がみなぎって、目ではまっすぐにベルモットさんを見つめる。

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