アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 素早くソファから立ち上がり「お帰りなさいませ」と頭を下げるが、今日のディートリッヒ様にその声は届かない。ラティリアーナ様の元へと近づくと、おもむろに彼女の腕を掴んで引き上げる。

 完全に強制送還される姿勢だ。
 けれどラティリアーナ様は力一杯自身の腕を引き抜き、そして両手を胸の前で纏めた。

「だって、だっておかしいじゃない! お兄さまがこんなに思い続けているのに、全く気づいてないなんて!」

 それはまるで遠回しに私への不満を爆発さえているよう。
 あれ、予行練習じゃなかったの?

 だって初めの彼女の話だと私はディートリッヒ様に相応しくなかったはずだ。
 なのに今の彼女はまるで私にアッシュ家の嫁に入って欲しそうな……。

「ラティリアーナ……」
「私、このままなんて認めませんからね!」
 それにはディートリッヒ様の眉も少し、ほんの少しだけ下がる。
 威力を弱めるどころか強く主張を続ける妹に困ったようだった。

 それはそうだろう。
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