アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 中はいつも通りというべきか静寂に包まれていた。けれど私が何かを勘違いして心配することはない。

 いつも通りの無表情。けれど組んだ両手に口を寄せながら前傾姿勢を取る様子から緊張しているということはありありと伝わってくるのだ。

 いつも通り会えばいいだけなのに。
 そんな姿すらも愛おしくて思わずクスっとしてしまうのだった。

 ――が、私が余裕でいられたのはその時だけだった。

 シンドラー王子とマリー様に近々結婚することを告げた。
 男爵令嬢と公爵家次期当主との結婚という、あまりにも身分の開いたその恋に二人は目を見開いた。

 もしかして別れろって言われるのかしら?
 お二人は応援してくれると思いこんでいただけに、固まってしまったことが心配でならない。

 そうなれば味方はあのラティリアーナ様と……後はセルロトとフランカかしら? お姉さまやジャックも喜んでくれるといいのだけど……。

「大丈夫だ」
 ディートリッヒ様は弱気になってしまった私の肩を抱いてくれる。

「ディートリッヒ様……」
 そうよね。
 身分差なんて初めから分かりきっていたことだものね。
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