アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 ディートリッヒ様がこれほど忙しいのなら、真面目な使用人一同、馬車馬の如くフル稼働しないと間に合わないだろう。おそらく普段の夜会とは比にならない規模で行われると見た。

 だからといってもう城のメイドではない私には、お城のことなどどうしようもできるはずがない。
 出来るのは主人であるディートリッヒ様の疲労を少しでも取り除いて差し上げることである。それには給与が高すぎるなんて訴えは問題外である。手を煩わせる云々の前に私情で彼の時間を奪うわけにはいかない。特に今は目の下にクマを作ってこそいないものの、その疲労は目に見てとれるほど。

 不当に安いわけでもあるまいし黙っとけ、というものだ。
 せめて忙しくない時期だったら話は違うのだろうが、ディートリッヒ様にそんなことを直談判出来るかと聞かれればNOだ。無理。絶対無理。仕事を増やしてくれと頼むのと訳が違う。

 ずーんと項垂れる私にベルモットさんは困ったように眉を下げる。

「アイヴィーさんは何か欲しいものとかはないのですか?」
「特に……ないですね」
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