アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 せめてもの救いは、考え事をしていても手はちゃんと動かしていたことだ。目の前にまとめたものを除けば一面を見渡しても、埃や砂は全く残っていない。メイドたるもの同時進行なんて朝飯前である。こんな時に自慢するようなことでもないが、まさかこんなところで生きるとは人生何が生きてくるかわからないものである……。
 
 精一杯に笑顔を作って、そしてこれ以上、突っ込まないでくれ……と祈る。
 そして主人の帰りをベルモットさんに伝えるべく、もといこの場から一刻も早く立ち去るべく身体を翻す。
 
 けれど私の願いはいとも簡単に散っていった。
 
「そうか。それでなぜ拳を天井に突き上げていたのだ?」
 気になりますよね……。
 眉間にシワを寄せるディートリッヒ様から理由を告げずに逃げ切ることは不可能だろう。
 城付きメイドならともかく、今の主人は他でもない目の前の彼なのだから。
 
「少し、気合を入れておりました。仕事中でありながら、ほかに考え事をしてしまい申し訳ありません……」
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