アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 こんな時は正直に謝るしかない。腰を直角に曲げて頭を下げる。すると頭上からは小さな声が聞こえてくる。けれど許しを待ちながら視点は床に固定しているせいか、ディートリッヒ様が何を話しているのかはわからない。
 
 お叱りにしては声が小さすぎる。
 いつもはハキハキと話すディートリッヒ様にしては珍しい。ダメなことだと分かりながら、勝手にほんの少しだけ頭と視線をあげさせてもらう。するとディートリッヒ様は視線を彷徨わせながら、なにかを言いよどんでいた。
 
「考え事というのは……その……」
 きっと私の頭が上がっていることなど、ディートリッヒ様の視界には入っていないのだろう。言いづらそうに首を掻くディートリッヒ様の視線は、私の後ろにある階段の、それも上の方を何度も行き来しているのだから。
 
 城では何度か、ディートリッヒ様が部下を叱る姿を目にしたことがある。
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