アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 大抵は一歩間違えればシンドラー王子のケガにつながりそうな時であったり、他人に迷惑をかけた時である。決して気分任せに叱りつけることはなかったし、ディートリッヒ様の部下はいつだって王子の傍に居続けるにふさわしい、誠実かつ真面目な人が多かった。
 
 だからどう怒っていいのか迷っているのかもしれない。過去に考え事に耽っていたなんて者はいなかったのだろう。
 
 ならばディートリッヒ様の結論が出るまで、私はただただ頭を下げるだけだ。
 忙しい日々でこんなに早く帰って来られることなどほぼないだろう。なのにこんな勿体ない時間を過ごさせてしまって……私ってメイド失格だな。
 
 給料が高すぎることや自分の無趣味に悩むより、次の仕事先に悩む方が先かもしれない。
 
 せっかく紹介してくれたシンドラー王子や、仕事を教えてくれたベルモットさん、それに何より私を採用してくれたディートリッヒ様には申し訳ないけれど……。手の中の箒の柄の部分を強く握りしめて、自分の行動を悔やむ。
 
 けれどしばらくしてからディートリッヒ様の口から続いた言葉はお叱りの言葉ではなかった。
 
「お姉さんのことか?」
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