アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 国中のありとあらゆるものを扱うこの町はウィンドウショッピングに最適である。なにせこの城下町で取り扱っていないものは、それこそ生産地にでも足を運ばねば手に入らない代物だけだろうといわれるほどだ。

 食べ物も服も雑貨も、お金さえ払えば大抵の物が手に入る。
 それこそ上級貴族の間で流行っているらしい、有名な作家が脚本を書いた劇場だって、後ろの方にはなるだろうがお金さえ払えば見ることが出来る。
 そんななんでも揃うこの城下で、これを機に新しい趣味でも見つけようって思っていたのに……。
 私の頭を占めるのは昨日の光景だった。

「あれ、一体何だったんだろう?」
 二度目となるディートリッヒ様の笑み――それが頭から離れてくれないのだ。
 笑った顔が見られて嬉しいはずなのに、理由がわからないからモヤモヤとしてしまうのだ。

 もしあの時、違うと答えていたら、彼はどうしたのだろう? とそんなことばかりを考えてしまう。

 屋台で売っていたクレープを食べても、おいしいはずのそれの味はあまり感じない。
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