アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 足取りが軽かったのは、きっと少しだけ気が緩んだから。
 これは役に立てたのかしら? と思うのは傲慢というものなのだろう。だがどうせ私がアッシュ家で出来ることなど指の本数よりも少ないのだ。気が抜ける瞬間が少しでも作れただけでいい仕事したと思っていいはずだ。


 よし、疑問も晴れたことだしウィンドウショッピングを本格的に始動させますか!
 気合を入れるために手を握りしめると、なにやら手の中に堅い感触のものがある。

「タイピン?」
 手を開いてみれば、そこにあったのはシンプルなシルバーのタイピンだった。それこそ、男性が普段使いしてそうなものである。

 ディートリッヒ様に似合いそう……。

 もちろん渡せないのはわかっている。分かってはいる、のだが、無意識に手にとってしまっていたらしい。気づかなければきっと考え事をしたまま会計に持って行っていただろう。値段も高くもなく、安くもないところが何ともいえない。
 どうせ渡せるわけがないという考えは根強くあって、どうやら無意識下でも発動しているらしい。身の程を弁えているととるか、渡せないと分かっていても買うのは愚かであると取るか……。

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