アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
「ええ。アイヴィーを私の家のメイドにします」
「そんなの!」
「私に不可能はないわ。だって私はマリー=リアゴールド、四大貴族のリアゴールド公爵家の長女にして王子の婚約者なんだから」
ふっと不敵に笑うその顔は氷のようで、自分よりもずっと大きなはずのディートリッヒ様を貫いてしまいそうなほど。
けれどその瞳がほんの少しだけ、どこか悲しげに揺らいでいたのを私は見逃さなかった。
13.
それからすぐにマリー様は自分の家の使用人を呼びつけた。
そして呆然と立ちすくむディートリッヒ様に「退いてちょうだい」と言い放つと、私の手を引いてその部屋を後にした。
無言のまま引かれるその手はやはり小さくて、小刻みな震えが伝わってくる。
その意味が果たしてなんなのかは分からない。けれど私はその手を拒むことはできずにいる。
だって私の中のマリー様はいつまでも子どものままなのだ。
例えいくつかしか年が変わらなくても、この先王子妃様になってそう易々と会話が出来なくなっても、私の中にはいつまでも私を睨みつけてきたあの顔が、笑ってくれた顔が、王子のことを相談してくれた顔がよみがえる。
「そんなの!」
「私に不可能はないわ。だって私はマリー=リアゴールド、四大貴族のリアゴールド公爵家の長女にして王子の婚約者なんだから」
ふっと不敵に笑うその顔は氷のようで、自分よりもずっと大きなはずのディートリッヒ様を貫いてしまいそうなほど。
けれどその瞳がほんの少しだけ、どこか悲しげに揺らいでいたのを私は見逃さなかった。
13.
それからすぐにマリー様は自分の家の使用人を呼びつけた。
そして呆然と立ちすくむディートリッヒ様に「退いてちょうだい」と言い放つと、私の手を引いてその部屋を後にした。
無言のまま引かれるその手はやはり小さくて、小刻みな震えが伝わってくる。
その意味が果たしてなんなのかは分からない。けれど私はその手を拒むことはできずにいる。
だって私の中のマリー様はいつまでも子どものままなのだ。
例えいくつかしか年が変わらなくても、この先王子妃様になってそう易々と会話が出来なくなっても、私の中にはいつまでも私を睨みつけてきたあの顔が、笑ってくれた顔が、王子のことを相談してくれた顔がよみがえる。