アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 そして何度でもこの子に手を差し伸べてあげたいと思うのだ。
 きっとこれから先、私の手なんて必要なくなるだろうけれど、それでも……。

「ごめんね、アイヴィー。勝手なことしちゃって……」
 馬車に乗り込む直前、マリー様は私にそう告げる。彼女の顔は見えないけれど、その声は震えていた。

 きっとマリー様は彼女の正しいと思った選択を取ったのだ。けれどそれに後悔が残っているのだろう。

 マリー様は優しい人だ。
 私のために行動して、今度も思うのは私のこと。

 ただのメイドにここまでしてくれるなんて、彼女の家のメイドになれたらきっと幸せなのだろう。けれど私はそれを望まない。いや、望んではいけないのだ。

 だってマリー様自身だってそれを望んでないのだから。

「いえ。でも良かったんですか?」
「何が?」
「お家の力を振りかざすの、お嫌いでしたよね?」

 マリー様は彼女が名乗った通り、四大貴族の一つであるリアゴールド公爵家のご令嬢である。けれど彼女は『リアゴールド家の御令嬢』という色めがねで見られることを嫌っている。リアゴールド家が嫌いな訳ではないのだ。ただ少女にはその名前は大きすぎた。
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