アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 お姉さまのドレスさえ作れればそれでいいって思っていたのに、達成しそうになったら次に手を伸ばして……。
 けれどそんな我が儘な私に手を差し伸べてくれる人がいる。そしてその人は「何から話そうかしら?」なんて両頬に手をあて、まるで甘いオヤツを選ぶかのようにウキウキとしている。

 だからこそ、私はワガママになってしまうのだ。


16.
「なにから話しましょうか。やっぱり初めから話すのが一番かしらね。私の知っている一番初めから」
 マリー様は小悪魔のようにいたずらっ子のような笑みを浮かべる。
 そして彼女の知る『始まり』から順を追って語っていく。



 ディートリッヒ様がマリー様に『城の何百というメイドの中でも一際変わった少女と出会ったのだ』と語ったのは、シンドラー王子が何度目かになる逃亡の後のことだそうだ。
 その時には何度か顔を合わせていたはずだが、特徴の薄い私なんて一度見たらすぐ忘れてしまったのだろう。仕方ない。私だってその自覚はある。
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