アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
 その上、服装も他のメイドたちと一緒なのだ。騎士としてだけではなく、貴族として社交界にも顔を見せる彼が一介のメイド風情の顔なんて覚えていないのだ。

 けれどそんな地味なメイドをディートリッヒ様が認識してくれたのはやけに顔を合わせる回数が多かったから。

「いつだって迷い込んだ先にはアイヴィーがいたそうよ」
 その言葉に思わず苦笑いが浮かんでしまう。
 シンドラー王子を追えばおのずと私の元にたどり着くのは当たり前のこと。なにせ私が王子を匿う共犯者なのだから。
 シンドラー王子の逃亡はとにかく回数が多く、彼を匿う日もそうでない日も、ディートリッヒ様と顔を合わせる回数は決して少なくはなかった。
 思えばシンドラー王子の逃亡回数が多いあの時が一番顔を合わせていたのではなかろうか。

「いつだって迷った先で道を切り開いてくれる不思議なメイド――ディートリッヒ様はそう話してくださったわ。だから私、悔しくってあなたに嫉妬しちゃった」
「え?」
< 88 / 241 >

この作品をシェア

pagetop