アイヴィーの花冠 ~シスコンと恋愛を拗らせた私はこの度、好きな人の屋敷でメイドとして働くことになりました~
「だって、シンドラー王子も同じようなことを言っていたの。この城には妖精がいるんだって。熱心に働くのに話してみれば他の誰とも違う、妖精みたいなメイドがいるって。楽しそうに話してくれたシンドラー王子と、不思議なものを見つけたみたいにはしゃぐディートリッヒ様。二人とも同じ人を指していることは女の勘が告げていたわ」
「はしゃいでいたんですか? ディートリッヒ様が?」

 あの鉄面皮でも被っているのかと思うあの人が?
 珍獣枠だとしても、人相手にはしゃぐの?
 いや、生き物に限らず、あの人の心をそこまで強く刺激するものがあるのか。
 ついマリー様の話を遮って口出しすると、彼女はふふっと嬉しそうに笑った。

「分かりづらいでしょう? ディートリッヒ様の感情は顔に出づらいの。貴族としてはそれでいいけれど、そのせいで何年も恋をこじらせるんだから欠点も大きいわよね」

『何年も恋をこじらせている』
 マリー様は意識して放った言葉ではないのだろうが、私にとってそれはあまりに大きな着火材となる。放たれた火に私の顔はぼおっと燃えさかり、数秒とたたずに耳までしっかりと赤く染まっていく。

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