政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
「はい」
「失礼します。至急、ご報告したいことが」
「どうした?」


副社長室に入ってきた誠二の表情から、よくない話だというのを察する。


「やはり社内にネズミがいるようです」


ネズミ=スパイである。そのことを理解している慧は、自身の予想が当たったことに大きなため息をついた。


「今回ばかりは予感が外れてほしかったな」
「そうですね」
「だが、お前が雇った人間が優秀で助かったよ」


慧の言葉に、彼が「それでも予想が外れる方がよかったですよ」と険しい顔をする。


事の発端は、すみれと結婚する前のこと。
御門ホールディングスと六条商事に、内通者がいる可能性が浮上した。


結婚を機に、御門は六条の経営を見直し、傘下に入れる準備を進めている。六条の名前こそ変えないが、いずれは御門が実権を握ることになった。
ところが、両社の限られた人間しか知らないはずの情報が、何者かに盗まれた痕跡があったのだ。


そこで、誠二がホワイトハッカーを雇い、内々に調べていた――というわけだ。


「ネズミの正体はわかりそうなのか?」
「ええ、恐らくわかるだろうということです。それとは別に、気になる話が」


慧が視線で続きを促すと、誠二が眉をひそめる。

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