政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
「なにがあったの?」
「その……えっと、キスと……それ以上のことも……」
「えっ! そうなの!? やったじゃん!」


予想外だったらしく、彼女の目が真ん丸になる。驚きを隠さない顔が、すぐさまグイッと前のめりになった。


「でも、いい感じになったわけじゃないよ? 慧さんは、早く跡継ぎを作ろうと思っての行動だったみたいだし」
「それでもいいじゃん! 跡継ぎ問題は、御門レベルなら避けられないでしょ。だとしても、セックスしたってことはすみれと妊活する気があるんだよ」


『セックス』や『妊活』というセンシティブなワードに、慌てて周囲を見る。幸い、他の客には聞こえていないようだった。


「でも、愛はないし……」
「もう! 暗いなぁ!」


すみれがしょんぼりすると、美弥が眉を下げて呆れたような顔をした。


「政略結婚なんだから、それは最初からわかってたことでしょ。でも、すみれは慧さんが好きだったんだし、他の人と結婚するよりよかったじゃない! 欲張りになっていく気持ちもわかるけど、今の状態でいきなり両想いになれるわけないよ!」


熱が入ったように話す彼女が、すみれをビシッと指差す。


「愛がないなら、愛される努力をしなさい!」
「愛される努力……?」
「すみれは可愛いし、人並みに自分磨きも頑張ってきたと思う。でも、今のすみれたちに必要なのはそういうことじゃないんじゃない? ふたりで向き合って話す時間とか、本音を言い合うことだと思う。ふたりで向き合う努力、ちゃんとした?」


耳に痛いアドバイスだった。しかし、ぐうの音も出ないほどの正論だ。


「してない……。全然できてない……」
「うん、そうだよね。すみれも複雑な立場なのはわかる。でも、そういう努力をする前から落ち込むのは違うんじゃない?」


慧を婚約者に選んだときから、すみれなりに向き合おうとしてきた。父の言いつけ通り嫌われないように気をつけつつ、彼のことを知ろうとしていたはずだ。


けれど、本気で向き合って話し合おうとはしてこなかった。

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