政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
慧に嫌われることが怖かった。なによりも、彼が引いた一線を越えてはいけないと思っていたから。
そんなことでは向き合ってきたとは言えない。


「それに、すみれは自分の気持ちを伝えてないでしょ?」
「うん……。でも、告白なんてしたら、慧さんを困らせるだろうから……」
「困らせてやればいいのよ! 夫婦なんだから、慧さんだってもっとすみれのことを真剣に考えるべきなの。それに、離婚しないならこれから何十年も一緒にいるんだから、どうせ隠し通せないでしょ」


美弥が呆れたようにため息をつき、「すみれは嘘つくの下手だし」と付け足す。
確かに、彼女の言う通りかもしれない。


今までは、御門と六条の関係を壊さないことを最優先にするべきだと思っていた。ただ、それではこの先もずっとなにも変わらないだろう。


どのみち、このまま慧に自分の気持ちを隠し切れるとも思えなかった。少なくとも、すみれは離婚する気はないのだから……。


「……本当に好きって言ってもいいと思う?」
「私はいいと思うよ。むしろ、言わないと進展なんてしないでしょ。すみれから告白して、ちょっとくらい困らせてやればいいのよ!」


悪戯っぽくニヤッと笑った美弥に、つい小さく噴き出してしまう。この瞬間、ずっとモヤモヤとしていた心の霧が少しだけ晴れた気がした。


「とりあえず、バレンタインに告白すれば? チョコでも渡して、ついでにちゃんと話し合った方がいいよ」


いつもの優しい表情に戻った彼女に、大きく頷く。


「そうと決まったら、このあとチョコ探しでもしますか! バレンタインフェアに行って、夜もおいしいものを食べよう!」
「うん」


美弥の明るさに救われる。彼女が叱ってくれて、本当によかった。
心からそう思ったすみれは、美弥に笑みを向ける。


「美弥、ありがとう」
「今年の友チョコも期待してるからね?」


ふふんと笑った彼女に、すみれはまた噴き出してしまった。

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