政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
(食べてもらえないかもしれないけど……せっかくだからデコレーションもしよう)


気を取り直したすみれは、いちごを洗って水分を拭き取る。それをハートに切り、バラのエディブルフラワーと金箔で仕上げた。


最後に載せたチョコプレートには、白いチョコペンで『Thank you』と書く。さすがに『Love』なんて書けなかったが、少しでも気持ちが伝わるといいな、と思った。


(って、食べてもらえるかもわからないけど……)


手作りのザッハトルテは、日持ちしない。今日渡せなければ、自分で食べるしかないだろう。彼に告白するどころか、チョコすら渡すこともできないなんて……。


けれど、『好き』と伝える勇気がまだないのも事実で……。正直に言うと、ほんの少しだけホッとしていた。


自室に戻ったすみれは、花柄の便箋に【慧さんへ】とペンを走らせた。


【お仕事、お疲れ様です。昨日はバレンタインだったので、ザッハトルテを作ってみました。冷蔵庫に入れておくので、よかったら食べてください】


丁寧な字でしたためた手紙を封筒に入れ、封筒の表にも【慧さんへ】と書く。それを持ってリビングに戻り、ダイニングテーブルに置いた。


あえて手書きにしたのは、慧が今日も帰ってこられない場合のためだ。
メッセージを送れば、気にさせてしまうかもしれない。しかし、手紙なら彼が帰宅しなければ読まれることはないし、夜までそのままだったら処分すればいい。


ザッハトルテを自分で食べれば、証拠は綺麗に隠滅できる。消極的な考え方かもしれないが、慧に気を使ってほしくなかった。


結局、ギリギリまで彼を待ったが、帰ってくることはなく……。すみれが家を出る時間になり、いつも通りに出勤した。

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