政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
「高校二年生あたりからですけど、料理は好きですし、早起きもわりと得意なので、自分で作るようになりました。学食で食べることもありましたが、大学でもお弁当を持っていく方が多かったです」
「えらいな。母親に作ってもらうか、買う子がほとんどだっただろうに」


きっと、彼もそちら側の人間だろう。すみれのように自分で手作りする学生など、周囲にいなかったに違いない。


「当時はお弁当作りにハマってたんです。いつの間にか習慣になりましたし、一人暮らしのときは節約にもなったので学生時代から作っててよかったって思います」


慧には縁のない節約も、すみれには必要だった。実を言うと、学生時代も両親に余計なお金をかけてもらうことがないよう、『自分でお弁当を作る』と申し出たのだ。


当時の母は、よく不安そうにしていた。それが六条の経営事情と関係していたこともなんとなく察していて、すみれなりにできることを探した結果だったとも言える。


「どれもおいしかった。ごちそうさま」


その後、彼は綺麗に完食し、穏やかに微笑んだ。すみれは優しい瞳を前に動揺を抑えたが、耳まで熱くなりそうだった。


「よかったです」
「明日も頼んでもいいか? 今日よりも少し遅くなると思うが」
「もちろんです。じゃあ、レモンクリームパスタにしましょうか」
「ああ、いいな。楽しみにしてるよ」


慧の柔らかな面持ちに、すみれの鼓動が高鳴る。彼の心にほんの少しだけ近づけた気がして、胸の奥がじんわりと温かくなっていくようだった。

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