政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
慧をじっと見ていると、彼がふっと瞳を緩めた。


「ホワイトデーはなにが欲しい?」


予想外の相談にきょとんとしたあとで、首を小さく横に振る。


「欲しいものは特にないので……。それに、ケーキを作っただけですし……」
「すみれは俺のためにしてくれたんだ。俺だってすみれになにか返したい」


そう言われると、断りづらい。すみれは少し悩んだあとで、「考える時間をもらってもいいですか?」と尋ねた。


「もちろん。遠慮なくリクエストしてくれ」


きっと、そんなことはできない。けれど、すみれは慧の気持ちが嬉しくて、自然と微笑みながら頷いていた。


「明日からもこんな風に話そう」
「えっ?」
「俺たちは、コミュニケーションが足りてないからな。少しずつでいいから話す時間を持ちたいんだ」


婚約披露パーティーのときの、慧と誠二の会話が頭に過る。あの話を思い出すと、あまり素直に受け取らない方がいいとわかっている。
それでも、戸惑いの中に喜びも芽生え、慧の言動に心が浮き立った。


「はい」


彼が優しい瞳ですみれを見つめ、「おやすみ」と言う。すみれも「おやすみなさい」と返すと、瞼を閉じた。


緊張で眠れそうにないと思っていたのは、わずかな時間だけ。慧の体温と鼓動が心地よくて、徐々に思考が働かなくなっていく。


うつらうつらしていると、彼の手がすみれの髪を撫でた気がして……。以前は無機質に思えた部屋が、今は温もりで溢れている気がした。

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