政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
それからというもの、すみれの生活が少しだけ変わった。
毎晩、慧の部屋で眠るようになったのだ。彼の帰宅が遅くて、先に就寝することになった日でも。


『俺が帰るのが遅い日でも、できれば俺の部屋で寝てほしい』


一度、慧の帰宅が深夜になった日、すみれは自室で眠ったのだけれど……。翌朝に顔を合わせると、彼からそんな風に言われたからだ。
以来、その通りにしている。


すみれが眠ったあとで慧が帰宅すると、寝ぼけ眼で『おかえりなさい』と言う。すると、彼が嬉しそうに『ただいま』と返し、すみれの髪を撫でてくる。
ベッドの中での時間は、まるで愛されているような幸福感に包まれていた。


そうして過ぎていく日々には、これまでになかった穏やかさがある。今日もそうだった。


「……ごめん、焼きすぎた」


テーブルに料理を並べた慧が、肩を落とす。珍しく落ち込んでいるのがわかる姿に、すみれはキュンとした。


「そんなことないですよ。いい匂いですし、おいしそうです」


遡ること、数日前。とうとうホワイトデーが訪れたが、結局すみれは欲しいものが思い浮かばなかった。


そこで、『慧さんの手料理が食べてみたいです』と言ってみたのだ。もちろんダメ元だったし、却下されると思っていた。


ところが、彼は承諾した。『料理はほとんどしたことがないが……』と、気まずそうな顔で言いながら。

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