政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
考えてみたら、当然のことだ。
御門の本家には使用人がいて、料理も彼らが担っている。慧は会食も多いし、あえて作らなくても食事はできる。


忙しいのなら、なおさら家事に時間を費やしたくないだろう。それなのに、彼はすみれの願いを叶えてくれた。


「どう見ても失敗だろ」


メインは、鹿児島から取り寄せたというシャトーブリアンだ。これを慧が焼いてくれたのだが、肉もニンニクチップもあちこち焦げてしまっている。


付け合わせのマッシュポテトは、温めるだけでできるもの。シャトーブリアンと合わせて盛りつけられていて、切った肉の断面が映えている。
そして、すみれが春キャベツのポタージュを用意した。


「やっぱり今からでも外に食べに――」
「私はこれがいいです」


すみれがきっぱりと言い切ると、彼が面食らったように眉を下げる。しかし、今日だけは引きたくない。


「……無理して食べなくていいからな」
「大丈夫ですよ。中はミディアムレアで綺麗に焼けてますし」


渋々諦めたような表情の慧と、テーブルに着く。ふたりで両手を合わせ、今日は先にすみれが料理に手をつけた。


ステーキを一口大に切り分け、口に運ぶ。ソースが絡んだ肉の旨みが口腔でじゅわっと広がり、瞬時に頬が綻んだ。


確かに、香ばしすぎる。けれど、すみれにとってはそれすらもおいしく感じた。


「すごくおいしいですよ」
「それは肉の質の問題だと思うが……」


彼が気まずそうにしながら、ステーキを食べる。微妙に感じたのか、その顔が渋くなっていった。

< 129 / 204 >

この作品をシェア

pagetop