政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
すみれは、思わずふふっと笑ってしまう。慧が色々な表情を見せるようになったのはまだ最近だが、彼の知らなかった顔を見るたびに胸が弾む。


それに、以前の慧なら、すみれの願いを叶えようとはしなかったはずだ。だからこそ、彼のひとつひとつの変化が嬉しい。
恋心がどんどん加速し、もう止められないと思うくらいに……。


少しのきっかけで本心を口にしてしまいそうなほどには、想いが大きくなっている。


(ちゃんと言わなきゃって思うのに……。でも、やっと慧さんとこんな風に過ごせるようになったのに、また気まずくなっちゃったら……)


バレンタインにするはずだった告白は、未だできないまま。最初のうちは機会を窺っていたが、今は決意がしゅるしゅると萎み、タイミングを逃し続けている。


想いを伝えたい。素直な気持ちを知ってほしい。
もう少しだけ今のままでいたい。気まずくなりたくないから、知られたくない。


相反する気持ちがグルグルと回り、結局は動けないままでいた。


「すみれ? やっぱりおいしくないだろ? 無理して食べなくていいから」


手を止めてしまっていたすみれに、慧が申し訳なさそうに告げる。すみれは慌てて首を横に振り、笑みを浮かべた。


「ちゃんと全部食べますよ。慧さんが初めて私のために作ってくれたんですから、残したりなんかしません」


そう言って、ステーキを頬張る。そんなすみれを、彼は眉を下げながらも嬉しそうに見ていた。

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