政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
翌日、六条の総務部は朝から騒がしかった。
朝一で税務署から連絡があったからだ。


きっかけは、二月末に提出した確定申告書に申告漏れがあったことらしい。そのついでなのか、税務調査も入ることになり、過去数年分の帳簿データなどが必要になった。


「とにかく税務調査までにデータを集めて」
「申告漏れの分は修正申告ですよね? 誰が担当しますか?」
「チェックも必要だし、三人は欲しいな」


社員からの問いに、部長がベテランの社員と経理担当を指名する。もうひとりはまだ決め兼ねているようだった。


六条の総務部は、人事・労務・法務・経理も担っている。中小企業ではよくあることで、六条も会社を縮小したのを機に今の形態になった。


しかし、人手不足もあり、常に業務が溜まっている。年末や年度末は仕事量も増えるため、こういったトラブルも何度かあった。


「私もお手伝いします。できることは少ないかもしれませんが、なんでもおっしゃってください」


部長に声をかけると、社員たちの視線が集まった。お前になにができるんだ、と言われている気がする。


けれど、今は委縮している場合ではない。やるべきことは山ほどあるのだ。


「じゃあ、修正申告書の作成を頼む。六条さんは入力作業が正確で速いから、彼らの補佐に入って」
「承知いたしました」


すみれは大きく頷き、修正申告を担当するふたりのもとへ行く。


「よろしくお願いいたします。おふたりにしかできない業務があると思いますので、私ができそうな業務があれば回してください」


ベテラン社員は男性で、経理担当はすみれの二年上の女性――八田(はった)だ。ふたりともどこか微妙な顔をしていたが、すぐに業務が振り分けられた。


それだけ時間がないのだろう。自席に戻ったすみれは、指定された入力作業を全力でこなしていく。

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