政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
幸い、タイピングは人よりも少しだけ速い。入社した頃は今以上に業務を回してもらえなかったため、仕事を与えられると一分でも早くこなすことを目標にしていた。


もちろん、正確さも忘れずに。パソコンは人並み程度に使えたが、社会人になってからは平日は毎晩タイピング速度を上げる練習をしていた。
その成果が実り、二時間弱で入力作業を終えた。


「終わりました。データは社内のクラウドに上げています」


八田が目を見開き、「もう?」と驚き混じりの声を出す。「お昼までかかると思ったのに」と言われたが、すみれは笑顔で入力データを出力した紙を見せた。


「はい。次はなにをしましょうか? 経理のことはあまりわかりませんが、数字のチェックや入力作業でしたらお手伝いできると思います」
「ありがとう。じゃあ、回させてもらうわ」
「はい」


こうして、午前中は修正申告書の作成で終わった。


「休憩はちゃんと取ろう。過度な業務は効率が落ちてよくない」


部長の一言で、部署全体が少し遅れた昼休憩に入る。すみれが自席でお弁当を広げようとしたとき、八田に「六条さん」と呼ばれた。


八田の傍には、彼女の同期がふたりとすみれの同期が立っている。この四人は、ランチや終業後によく行動を共にしていた。


「私たち、これからランチに行くの。よかったら一緒にどう?」
「えっ……?」
「もちろん、無理にとは言わないわ。あなた、いつもお弁当よね?」
「あっ、はい。……えっと、いいんですか?」


すみれは戸惑いながらも確認する。彼女は、「嫌なら誘わないわよ」と苦笑した。


「じゃあ、ご一緒させてください」


お弁当なら、会社の冷蔵庫に入れておいて明日の朝食にすればいい。すみれにとっては、それよりも同僚とランチに行けることの方が大切だったから。

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