政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
会社から徒歩二分ほどのイタリアンレストランに移動し、テーブルを囲む。みんながランチセットを頼んだため、すみれも同じものにした。


「お弁当、大丈夫だった?」
「はい。明日の朝ご飯にしますから」
「えっ?」


八田の質問に答えると、四人が目を真ん丸にする。すみれは、おかしなことを言っただろうか……と不安になった。


「処分しないの? あなた、曲がりなりにも社長令嬢じゃない」
「会社の冷蔵庫に入れてますし、明日でも食べられますから捨てるのはもったいないです。あっ、もちろん傷んでたら処分しますよ!」


意地汚いと思われたかもしれないと、慌てて補足する。すると、四人が噴き出した。


「なーんだ。あなたって意外と普通の子なのね。いつも大人しいし、ひとりでいるからもっとプライドが高いタイプかと思ってたわ」
「そんな風に思わせてしまっていたんですね。父の手前、私が下手に話しかけると、みなさんのご迷惑になると思って……。誤解させてしまってすみません」
「ううん、こっちこそごめんなさい。私たちの素っ気ない態度を見たら、話しかけづらかったわよね」
「そんな……」


すみれがかぶりを振ると、話を聞いていた三人も話し出す。


「面倒だと思ってたの」や「正直、腰掛けだと思ってた」という言葉には頷ける。同期の「避けちゃってごめん」という謝罪には、笑顔で「ううん」と返した。


「これからは、お弁当じゃない日があれば一緒にランチしましょ。近いうちに飲みに行く予定だから、よかったらおいでよ。あっ、でも旦那さんの許可がいるかな?」
「えっと、慧さ……夫は反対はしないと思います。事前に話しておけば大丈夫です」


会社の人間の前で、慧を『夫』と呼ぶのはなんだか恥ずかしい。どぎまぎしてしまったすみれに、八田がクスッと笑った。


「六条さんって、意外と普通なんだね。……って、社長令嬢に失礼か」
「い、いえ! そんなことはないです! 私は会社のことには深く関わってませんし、こんな風に接していただけると嬉しいです」


彼女が「よかった」と笑い、みんなも笑顔を見せる。初めての同僚たちとのランチタイムは、すみれの心を優しい温もりで包んでくれた。

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