政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
会社近くの公園の桜が咲き始めた、三月下旬。
仕事を終えたすみれが八田たちと外に出ると、見覚えのある車が停まっていた。


「すみれ」


運転席から降りてきたのは、慧だ。すみれは突然のことに驚き、言葉を失ってしまう。


「えっ? 六条さんの旦那さん?」
「ってことは、御門の……! イケメンすぎない!?」


八田を始め、同僚三人がきゃあきゃあと騒いでいる。そんな中、彼は穏やかな笑みを浮かべた。


「妻がお世話になっております」


丁寧に挨拶をした慧に、八田たちが「いえいえ、そんな……」と口々に返す。そのうちのふたりは、彼を見ながら頬を微かに赤く染めていた。


「六条さん、迎えに来てもらえるなんて愛されてるわね」
「えっ? えっと……」


すみれは八田の言葉で恥ずかしくなり、顔が熱くなっていく。彼女は「やだ~、可愛い!」と言ってクスクスと笑った。


「じゃあ、私たちは行くね」
「あっ、はい。お疲れ様でした!」
「お疲れ様」と声を揃えた同僚たちを見送り、慧を見上げる。彼もすみれを見ていたようで、優しい笑みを向けられていた。
「乗って」


助手席のドアが開けられ、慧がすみれの手を取る。すみれがエスコートされるがまま車に乗り込むと、彼が運転席に回った。


「あの、どうして……?」


車が走り出して程なく、すみれが慧の横顔を見ながらおずおずと切り出す。彼は、前を向いたまま瞳を緩めた。

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