政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
「珍しくこの時間に仕事が片付いたから、すみれに会えるかと思って」


慧が、当たり前のように答える。しかし、すみれはまさか彼に会社まで迎えてきてもらう日が来るとは思いもせず、未だに驚きが消えなかった。


「……迷惑だったか?」
「そんなことは……。でも、すごく驚きました」
「次からはちゃんと連絡するよ。入れ違になっても嫌だしな」


あまりにも普通に〝次〟の話をされ、すみれがきょとんとする。
つまり、慧の中では二度目以降もあるということだ。それを理解した途端、ようやく遅れたように喜びが芽生えた。


(……でも、急にどうして?)


回数が増えていく家での食事、髪を乾かしたり一緒に眠ったりすること。一見すれば、夫婦の距離はどんどん近づいている。


しかし、すみれは未だに自分の想いを伝えていない。彼に至っては、すみれのような恋愛感情はないはず。
だからこそ、こんな優しい時間がいつまでも続くとは思えない。


(偽りの蜜月みたいなもの……かな)


告白は、きちんとするつもりでいる。けれど、叶うなんて思っていない。


政略結婚、慧と誠二の会話、御門と六条の関係性。それらがすみれに夢を見させてはくれない。
だから、期待しても傷つくだけだとわかっていた――。

< 135 / 204 >

この作品をシェア

pagetop