政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
(慧さんに見られてたなんて……)


「会ったのは偶然というか……。真ちゃんが駅で待ってて……」


慧が小さく舌打ちをする。ビクッとして顔を上げると、彼は鼻先で笑い飛ばすように「真ちゃんか」と呟いた。


「随分と仲がいいんだな。結婚してるのにふたりきりで会うほどとは知らなかった」


低い声音には、怒りが混じっている。


「そんな……! 私は……きゃっ!」


連絡も取っていなかった、と言おうとした。しかし、言葉を遮るようにすみれを抱えた慧によって、小さな叫びに代わってしまう。


お姫様抱っこをされたすみれは、バランスを崩しそうになってヒヤッとする。咄嗟に彼の肩に手を置いたが、そのまま移動させられた。


「慧さん……!」


すみれの声は届いていないとばかりに、慧が無言で寝室に行く。ドアを乱暴に開けた彼は、性急にすみれをベッドに下ろした。


すみれの背中がベッドにつき、慧が覆い被さってくる。すみれを見る双眸には、最近の彼にはなかった冷たさが宿っていた。


きちんと話さなくてはいけない。そう考えたときには端整な顔が近づいてきて、すみれの唇が塞がれていた。


「っ……」


キスは、慧に抱かれた夜以来。触れ合った唇から伝わる熱は高い気がしたのに、心にはひんやりとした空気が吹きつけるようだった。
彼の手がすみれの頬に触れた次の瞬間には、舌がすみれの口腔に入ってきた。


「んぅっ」


最初から容赦のないキスに、息が苦しくなる。舌を搦め取られるのはあっという間で、苛立ちをぶつけるがごとくきつく吸い上げられた。


その間に、骨ばった右手がすみれの身体を辿る。その手はすぐにワンピースタイプのルームウェアの裾に至り、それを捲って太ももを撫でた。

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