政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
(やだ……)


少し前から、慧との距離が少しずつ近づいていた。彼の笑顔や優しさからは、政略結婚を成功させること以上のものが覗いている日もあった気がしている。


それなのに、また振り出しに戻るのだろうか。むしろ、一度距離が近づいた分、もっと遠くなってしまうのではないだろうか。


「慧さん……!」


すみれは意を決して顔を背け、慧の肩を全力で押す。軽く乱れた呼吸をきちんと整えもせず、彼を真っ直ぐ見上げながら口を開いた。


「まずはちゃんと話を聞いてください」


慧がハッとしたような顔をし、気まずそうにしながらも身体を起こす。すみれも起き上がり、ベッドの上で向き合ってから話を切り出した。


「真ちゃんに話があると言われて、あまり深く考えずについてきました。今は連絡も 取ってませんが、家族ぐるみの付き合いだったので断ろうとは考えませんでした。それについては本当に軽率だったと思います。ごめんなさい……」


彼の怒りの理由のすべてはわからない。ただ、妻が他の男性とふたりきりで会うなど、たとえ幼なじみのような関係性の相手でも嫌だろう。


だからこそ、一部始終を話さなくてはいけないと思った。


「話の内容は?」
「私を心配してるというようなことでした。それから……告白もされました……」
「は?」


慧が纏う空気が、瞬時に冷たくなる。彼の目に浮かんでいた怒りと苛立ちが濃くなったが、すみれは深呼吸をして続きを紡いだ。

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