政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
「御門と六条……? どうして真輔さんが?」
「それもあとで話すよ。人に聞かれると、本当にまずいから。近くに記者がいたり誰かがSNSに書いたりしたら、取り返しがつかなくなるだろうし……」


いったい、なんの話なのか。見当もつかないが、場所を変えた方がいいのはわかる。


「じゃあ、どこかお店に……」
「そうしよう。近くにいい感じのバーがあって、個室を取ってあるんだ」


用意周到な気がした。けれど、御門と六条のことだと言われた以上、大人しくついていくしかない。


バーは、大通りから一本入った路地にあった。外観に違わず店内もこぢんまりとしているが、奥に一室だけ個室がある。小さな丸テーブルに、ソファが一台だけ。


「どうぞ」


すみれは端の方に座り、真輔と距離を取った。彼は特に気にする様子もなく腰掛け、四十代くらいのマスターにウイスキーを頼む。


「すみれちゃんは? お酒、飲めるよね?」
「明日も仕事だから、ウーロン茶にしようかな」


すみれがやんわりと断ると、真輔は「そっか」と笑った。すぐにマスターが出ていき、ふたりきりになる。


少しだけ不安が過ったが、近くにスタッフがいるのに滅多なことはしないだろう。それに、すみれが座っている側からでもドアには行ける。


個室とはいえ、防音でもなさそうだ。なによりも、狭い店で大声を出せばさすがに聞こえるはず。


そんな風に考えたところで、はたと気づく。すみれは、真輔を警戒しているのかもしれない……と。

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