政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
「さて……これを世間に流せば六条商事はもちろん、御門ホールディングスだって無傷では済まない。わかるよね?」


口調は穏やかだが、声には温度がない。彼らしくないと思う反面、これが本性なんだろう……と冷静に考えている自分もいた。


「なにが目的ですか? 私に話したということは、私に条件を出したいんですよね」
「話が早くて助かるよ。父親の言う通りに生きてるお人形だと思ってたけど、曲がりなりにも社長令嬢の自覚はあるのかな」


そんな風に思われていたと知っても、傷つきはしない。ただ、真輔はもうすみれが知っている人間ではないということだけははっきりとわかった。


「君が俺を選ぶのなら、これは表には出さない」
「は……?」


すぐには意味を理解できなかった。『選ぶ』という言葉がなにを指すのかも、そんなものを望む理由も……。


「まさか金銭でも要求すると思った? すみれちゃんにはそんな金はないだろ。就職してから一人暮らしをしてたけど、調べた限りでは質素な生活だった。六条の経営状態を見ても、君にも実家にも金がないのはわかってる」
「だったら、どうしてこんなこと……」
「六条の名前と会社が欲しい」


彼の目が怪しく光る。その奥にあるのは私利私欲で、すみれへの恋愛感情などではないことはすぐに理解できた。
恐らく、告白も嘘だったのだろう。


しかし、真輔が六条商事を欲しがる理由はわからない。名前はともかく、六条商事は御門の力で持ち応えただけである。


御門の傘下に入った今、もう六条のものではない。すみれと結婚したところで、六条商事が手に入るとも思えなかった。

< 164 / 204 >

この作品をシェア

pagetop