政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
「ああ、そうだ。今日も遅くなりそうなんだ」


味がしないような気持ちで朝食を終えると、慧を玄関まで見送る。すると、彼が残念そうに眉を下げた。


「ご飯はどうしますか?」
「何時になるかわからないからいらないよ。だが、もし下拵えとかしてるなら、明日の朝にでも食べるから」
「大丈夫ですよ。慧さんがいらないなら、私も適当に済ませますね」
「そうした方がいい」


慧の手がすみれの髪をそっと撫でる。まるで労わるような仕草に、胸の奥がキュンと高鳴った。


「すみれ、本当は寝不足なだけじゃなくて疲れてるだろ?」
「そんなこと……」
「自覚がないのかもしれないが、あまり顔色がよくない。今夜はデリバリーかテイクアウトでもしてゆっくり休んで。俺のことは待たなくていいから先に寝てて」


首を横に振ったが、彼がすみれの話を遮って苦笑する。その顔には、心配の色が浮かんでいた。


(慧さんだって、すごく忙しいのに……)


気にかけてもらえることは嬉しい。こんなにも大切にしてもらえるなんて、少し前までは想像もできなかったから……。
その反面、多忙な慧に心配をかけていることが申し訳なかった。


「わかりました。でも、慧さんも無理しないでくださいね。トラブルがあったって言ってましたけど、昨日も帰りが遅かったですし」
「御門を守るためだ。今は六条も」


真っ直ぐな目で言い切る彼は、文字通り全身全霊で御門に心身を捧げている。今は、傘下に入った六条のことも。


慧の仕事ぶりを知っているわけではない。それでも、全力で御門と守ろうとしているのはわかる。
とはいえ、心配してしまうのはすみれだって同じだ。

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