政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
「それに、俺は慣れてるから平気だよ。すみれと結婚する前は、もっとひどい生活だったしな」
「でも……」
「心配しなくても、体力だってそれなりにある。すみれもよく知ってるだろ?」


色香を孕んだ視線を向けられて、そこに込められた意味に気づく。すみれは頬がかあっと熱くなり、彼の艶麗な表情にドキドキさせられた。


「もう……。朝からなんの話をしてるんですか」
「なんのって、体力の話だろ? すみれこそ、なにを想像したんだ?」


慧が悪戯っぽい微笑を浮かべる。からかわれたのだと察し、すみれは悔しくなった。


「慧さん、わざとですよね?」


ムッとしたすみれに、慧がハハッと笑う。すみれが拗ねた顔を見せるようになったのと同じで、彼も冗談を言ったりからかってきたりすることが増えた。


こんなくだらないやり取りも、もう何度目だろうか。悔しかったり恥ずかしくなったりするのに、それ以上に慧の心に近づけていることが幸せだ。


「ごめん、ごめん。すみれの拗ねた顔が可愛くて、つい」


悪びれなく笑う彼は、とても楽しそうに見える。そんな笑顔を向けられたら絆されてしまうのが、惚れた弱みというものだろう。


「今のトラブルが落ち着いたら、デートしよう。新婚旅行の計画も立てないといけないな」
「はい」


未来の約束に、心が和んでいく。すみれが微笑むと、唇にチュッとキスをされた。


「じゃあ、行ってくる」
「いってらっしゃい。気をつけて」
「ああ、すみれも。くれぐれも無理はするなよ」


小さく頷き、手を軽く振って慧を見送る。彼は心配そうにしがらも微笑み、すみれの頭をポンと撫でてから出掛けていった。

< 170 / 204 >

この作品をシェア

pagetop