政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
「なるほどねぇ……。表情が硬くて近寄りがたくて未熟だから、か。誰が言い出したのか知らないけど、なかなか上手いな。まあ、俺は蕾を開かせる楽しみがあっていいと思うけど。心も、身体も……ねぇ?」
ぞわっ……と、背筋が粟立つ。箱入り娘でも、その言葉がどういう意味かわからないほど無知ではない。
父は過保護だったが、すみれの自衛のためにこういうことも少しは教えていたからだ。
「私、そろそろ失礼します」
体調は優れないけれど、このままこの場にいるのは危険だと判断する。人目はあるものの、会場よりも人は少ない。
すみれは、とにかく男性から離れようと立ち上がった。直後、彼の手がすみれの手首を掴んだ。
「っ……! あ、あの……」
「まあまあ、もう少しいいだろ? 前から君と話してみたかったんだ」
ただ話したいだけではないのは、すみれにだってわかる。
同時に嫌な予感が大きくなったが、失礼なことはできない。相手の素性を知らない以上、六条に不利益が起こらないとも限らないからだ。
些細なことが会社の命運を危ぶめるときもある――という父の言葉が、脳裏に過った。
「でも、急いでいて……」
「だったら、連絡先を教えてくれたら放してあげるよ」
なぜ相手に主導権があるのか。どうしてこちらが弱い立場なのか。
すみれは不快感を抱いたが、自分に選択肢がないことも悟っていた。
けれど、こんな男性に連絡先を教えたくない。
そうすることで〝同意〟と捉えられたら……。万が一にも、彼が父の眼鏡に適ってしまったら……。すみれには、もう逃げ道がなくなるからだ。
受け入れても、断っても、自分が不利になる結果しか見えない。八方塞のような状況に困惑し、言葉が出てこなかった。
「六条さん、あちらでご両親が探されてましたよ」
目の前の男性を振り切れずにいたとき、別の男性がこちらにやってきた。そうして目の前に現れた彼が、フォーマルスーツ姿の慧だったのだ。
ぞわっ……と、背筋が粟立つ。箱入り娘でも、その言葉がどういう意味かわからないほど無知ではない。
父は過保護だったが、すみれの自衛のためにこういうことも少しは教えていたからだ。
「私、そろそろ失礼します」
体調は優れないけれど、このままこの場にいるのは危険だと判断する。人目はあるものの、会場よりも人は少ない。
すみれは、とにかく男性から離れようと立ち上がった。直後、彼の手がすみれの手首を掴んだ。
「っ……! あ、あの……」
「まあまあ、もう少しいいだろ? 前から君と話してみたかったんだ」
ただ話したいだけではないのは、すみれにだってわかる。
同時に嫌な予感が大きくなったが、失礼なことはできない。相手の素性を知らない以上、六条に不利益が起こらないとも限らないからだ。
些細なことが会社の命運を危ぶめるときもある――という父の言葉が、脳裏に過った。
「でも、急いでいて……」
「だったら、連絡先を教えてくれたら放してあげるよ」
なぜ相手に主導権があるのか。どうしてこちらが弱い立場なのか。
すみれは不快感を抱いたが、自分に選択肢がないことも悟っていた。
けれど、こんな男性に連絡先を教えたくない。
そうすることで〝同意〟と捉えられたら……。万が一にも、彼が父の眼鏡に適ってしまったら……。すみれには、もう逃げ道がなくなるからだ。
受け入れても、断っても、自分が不利になる結果しか見えない。八方塞のような状況に困惑し、言葉が出てこなかった。
「六条さん、あちらでご両親が探されてましたよ」
目の前の男性を振り切れずにいたとき、別の男性がこちらにやってきた。そうして目の前に現れた彼が、フォーマルスーツ姿の慧だったのだ。