政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
「そもそも、俺は自分の妻を口説かれて許せるほど優しくはない」
「それは、ちゃんと断りましたし……! っていうか、たぶん六条の名前が欲しかっただけですから!」
「だとしても、すみれは俺から離れようとしたよな?」
「っ……」


にっこりと微笑まれたが、目が笑っていない。


「二度とそんなことを考えないようにしてあげるよ」


まるで、幼い子どもに言い聞かせるような言い方だった。優しい口調に一瞬安心したところで、視界がくるんと動く。


「えっ?」


気づけば、真正面には慧の顔が、その奥には天井が映っていた。
数秒遅れて、すみれはソファに背中がついていると理解する。自分の上に彼が覆い被さっていることも……。


逃げられない予感を抱いたとき、キスで唇を塞がれた。


「んっ……」


唇が重なったと思ったら、舌が入り込んでくる。歯列を軽く撫で、舌先で顎の裏をくすぐって、すぐに舌が捕らえられた。


間近にある慧の顔はぼやけているのに、かっこいいと思う。すみれは瞼を閉じるタイミングを逃し、彼もすみれを見つめていた。


恥ずかしさも戸惑いもあるのに、すっかり覚えた熱に心地よさを感じてしまう。強引なようでいて優しさもある口づけに、すみれの心がとろけていく。


すみれが自らも舌で応えるまでは、わずか数秒のこと。本能的に慧の首に腕を回し、舌をこすりつけた。

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