政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
庭園の一角にある美しいローズガーデンには、東屋がある。すみれはそこのベンチに座るように促され、彼も少し離れて腰を下ろした。
東屋にいると三日月が見えなくなったが、星は少しだけ見える。


「寒くないか?」


五月上旬の夜風は、とても心地いい。


「はい……」


すみれは小さく頷いたが、内心ではパニックだった。
なぜ、こんなことになったのか。振り返ってもみてもよくわからない。思考がグルグルと巡る中、数秒してハッとした。


「あの、両親は?」
「さっき見たときはまだ会場内にいたよ。話が盛り上がってるようだったから、きっと心配しなくてもいい」


その口ぶりだと、両親はやっぱりすみれを探してなどいなかったのだろう。
だったら、なぜ彼はすみれを助けてくれたのか。もともと交流があったのならまだしも、彼と話したのは今が初めてだ。


「仕事の電話が入って会場を出たら、偶然にも遠目に体調が悪そうな君とさっきの男を見た。電話が終わっても目に余ったから割って入った――といったところだ」


端的な説明を聞き、すみれは慌てて頭を下げる。突然の展開に戸惑って、お礼を言うのをすっかり忘れていたことに気づいたのだ。


「さきほどは助けていただき、ありがとうございました。困っていたので本当に助かりました」
「あの男が目に余っただけだ。そんな風にかしこまらなくていい」


そう言われても、相手は御門の御曹司。今後、六条と接点ができるとは思えないが、粗相があってはいけない。
緊張からすみれが黙り込むと、慧が「ああ、そうだ」と独りごちた。


「自己紹介がまだだったな。御門慧だ」


わずかに緩められた瞳が、すみれに向けられる。そこから感じ取れた優しさに、すみれの緊張が解れた。

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