政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
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それから二か月。日々は穏やかに過ぎていき、十一月が訪れた。
今日は、慧とすみれの結婚記念日である。生活が大きく変わったこの一年は長くも感じたが、ようやく一周年を迎えたのだ。
ディナーには、初めてのデートで訪れた三ツ星のフレンチレストランを予約した。彼女はもう覚えていないかもしれないが、ここから新たに始めたかったのだ。
料理の内容は違うが、個室は同じ部屋を指定した。当時と変わらないはずなのに、今日は室内が明るく見えるのは気のせいだろうか。
コースは、アミューズからカフェ・プティフルールに至るまで完璧だった。味は言うまでもなく、見た目も美しい。
当時のすみれは、大人しく食事をしていたけれど……。今夜は、料理が運ばれてくるたびに明るい笑みを見せ、楽しそうに食べていた。
そんな彼女を見て、ふと思う。
最初から告白していれば、とっくにこの笑顔を見られたのではないか……と。
回りくどく外堀を埋めたりせずに、真っ向勝負をしていれば……。そこまでできなくても、少しずつアプローチしていれば……。もっと違う未来があったのだろう。
けれど、あの頃はそんな風にできなかった。
慧にとって、誰かに恋をしたのは初めてのこと。未知の恋情に戸惑い、どうすればいいのかわからず、仕事のごとく進めていくことしかできなかったのだ。
なんとも情けない話だ。そして、すみれがそんな自分を選んでくれたことは奇跡のように思えた。
だからこそ、この先なにがあっても彼女を手放す気はない。
「失礼いたします」
慧がベルを押すと、ウェイターが菫色の花束を持って現れた。それを受け取り、彼には下がってもらうように告げる。
ふたりきりになると、立ち上がってすみれの傍に行き、おもむろに跪いた。ベタかもしれないが、もう一度、今度はきちんと始めたかったのだ。