政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
「もう少し上手く話せなかったのか」


ふたりきりになった途端、父が険しい顔をする。普段ならすぐに謝罪するすみれだが、今はそれどころではない。


慧と真輔が婚約者候補だと紹介されたのは、もう一時間も前のこと。にもかかわらず、すみれだけがそのときから止まったままでいるようだった。


「すみれ、聞いてるのか」


ぼんやりとしているすみれに、父が痺れを切らしたようにため息をつく。けれど、父の機嫌なんてどうでもよかった。


「本当に、あのおふたりが婚約者候補なの?」


いつもなら、謝罪もなく質問などできないのに……。今のすみれには、父の顔色なんて些末なことだった。


「そうだと言っただろう。同じことを言わせるんじゃない」
「どうして、御門さんと真輔さんが……?」
「真輔くんは、母さんから頼まれたんだ。会社としては不足な部分もあるが、彼自身はそれなりに優秀だ。滅多なことにはなるまい。それに、今の六条ではもうたいした会社とは縁が繋げないからな」


つまり、すみれが思っている以上に六条商事は危険なのだろう。崖っぷちどころか、もう谷底に落ち始めているのかもしれない。


ただ、だとしたらなおさら慧も婚約者候補だというのが信じられなかった。


「御門さんは……? 少なくとも、うちが釣り合うような相手じゃ……」


さすがに最後までは言えなかったが、父は渋い表情ながらも怒りを見せない。それほどまでに六条は困窮しているのが、嫌でも伝わってくる。

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