政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
「すみれが知る必要はない。ただ、なにがあっても、御門さんの機嫌を損ねるな」


父にとって、そして六条にとって、御門との縁は願ってもいないこと。
さきほど、父は『今後の選択肢はすみれに』とは言っていたけれど……。父がすみれの夫に真輔よりも慧を望んでいるのは、火を見るよりも明らかだ。


とはいえ、相手が御門なら、その選択肢はあってないようなものである。
すみれがどうであれ、慧の気持ちが変わればこんな話は立ち消えてしまう。


これは一瞬のチャンスで、明日にはなくなってしまう話かもしれない。彼の気まぐれで吹き飛ぶような話かもしれない。


そう思ったとき、すみれから困惑も迷いも消えた。


「私は御門さんがいい……。お父さん、御門さんと結婚させて」


もしこのチャンスが天からの贈り物なら、絶対に手放したくない。どうせ誰と結婚しても、愛のない結婚になるのだ。


だったらせめて、自分が好きな人と結婚できる機会を逃すわけにはいかなかった。愛されなくても、愛している人と結婚したい。


「わかっていると思うが、私だって言うまでもなく御門さんがいい。真輔くんも優秀だとはいえ、相手が御門なら比べるまでもないからな」
「うん」
「そうか。だったら、一刻も早く話を進めるようにする。だが、念のために真輔くんにはまだなにも言うな。私がすべて対応する」


喜びはなかった。
素直に喜べるほど、単純でも子どもでもない。慧に好意を持たれていると思うほど、浅はかでもない。


それでも、すみれは覚悟を決めて小さく頷いた――。

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