政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
慧と会うことになったのは、顔合わせから二週間が経つ頃。
父経由で彼に誘われ、まずはディナーに行くことになった。


送迎も予約も、当然のようにしてくれる。店は三ツ星のフレンチレストランで、個室を押さえられていた。


「先日はあまりお話しできなかったので、今日はすみれさんのことを色々と教えてもらいたいと思ってます。ただ、堅苦しい雰囲気だと気疲れしてしまいますし、敬語はなしでどうでしょう?」
「えっと……御門さんはそうなさってください。私はちょっと……」


立場も年齢も、相手の方が上なのだ。すみれには荷が重く感じ、とてもじゃないが敬語を外せる気がしなかった。


「じゃあ、お言葉に甘えて。すみれさんもいつでも敬語をやめていいから」
「はい」


小さく頷いたが、そんな日が来る気はしない。
戸惑いと緊張でいっぱいの中で乾杯し、コース料理が順番に運ばれてきた。


食事中、慧から普段はどんな風に過ごしているのかと尋ねられる。すみれは、できるだけ端的に、それでいて素っ気なくならないように話した。


その後、同じ質問を返そうとしたけれど、すぐに断念する。彼が、すみれの仕事内容について訊いてきたから。


その次は、趣味の話になった。しかし、これも答えるのはすみれだけ。
ひとつ答えると、また次の質問が飛んでくる。口を挟む隙間がない……とかではなく、単純にすみれには回答権しかないような雰囲気だった。


慧は、あまり口数が多い方ではないのかもしれない。そう気づいたのは、彼が自らのことについて多くを語らなかったからだ。


訊けば答えてくれるのかもしれないが、どこまで踏み込んでいいのかわからない。そもそも、自分から話してくれないことが答えだとも受け取れる。
すみれは空気を悪くしてはいけないと思い、質問はできなかった。


二時間ほどのディナーは、和やかな雰囲気とは言い難かったけれど……。慧と連絡先を交換し、またすぐに会う約束をした。

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