政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
「六条の経営状態はともかく、名前は今でも利用価値はある。悔しいけど、頭の固い人間にとっては、うちみたいな戦後から発展してきた企業より信用に足る名前だからな。あとは子どもか。わかってると思うが、こっちもできるだけ早い方がいい」
「……ああ」


同意した慧の声が、やけに無機質に聞こえた。すみれの耳を通り抜けたそれは心に落ちていき、鈍色に広がっていく。


奇しくも、すみれは知ってしまった。ずっと知りたかった彼の本心を――。


ただ、わかっていたことでもある。慧がすみれに対して愛情があるわけではない……と。


すみれにそんな価値がないことは、すみれ自身が一番わかっている。彼に見初められた……なんて、おこがましい勘違いをしたことはない。


正直に言うと信じられないが、すみれが思う以上に御門にとって六条には利用価値があった。そして、後継者が必要だった。
ただ、それだけのことだ。


最初からわかっていたこと。なにも驚きはしない。
慧にとって、この結婚は家のために選んだ道だというだけの話。それ以上でもそれ以下でもない。


明言されていなかったが、予想できていたことが確信になっただけ。それなのに……どうしてこんなにも胸の奥が痛むのか。


(私……期待しちゃってたのかな……)


そんなつもりはないのに、いつしか淡い期待を持っていたのかもしれない。彼も自分を想ってくれるようになるのではないか……と。


すみれと違って慧には気持ちがないとわかっていたはずだが、気づかないうちに期待してしまっていたのだ。


急に恥ずかしくなって、息を潜めながら忍び足でこの場から離れる。


その後、五分ほどして控室に現れた慧の前で、すみれは必死に笑みを繕っていた。けれど、ズキズキと痛む心はどんどん沈んでいき、落ち込んでしまう。


この日ほど、彼の口数の少なさに感謝したことはなかった。

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