政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
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すみれの気持ちを余所に、時間は駆けるように流れていった。
慧とは定期的に会い、食事を共にする。ときにディナーのあとにバーにも行くが、一緒にいる時間は長くはない。
だいたい二、三時間ほど。稀にランチにも行くが、食事が済めば家に送られる。
夜だから会う時間が短いのではなく、昼でも変わらない。つまり、彼はすみれと長時間一緒に過ごす気がないのだ。
婚約披露パーティーで偶然聞いた話もあいまって、ますます悲しくなった。けれど、最初からわかっていたことだ。
婚約者候補として慧が現れたときから、おかしいとは思っていた。
御門の力があれば、もっといい縁談はいくらでもあるはず。にもかかわらず、彼がすみれとの結婚を希望したのは、六条になにかしらの価値を見出したからだろう。
きっと、すみれにはわからない利用価値が六条にはまだあるのだ。その上で、子どもも必要としている。
だったら、それでもいい。
憧れていた男性が……手が届かないはずの人が、もうすぐ夫になる。
慧は、『すみれさんにとっていい夫になるよ』と言ってくれた。
多くは語らない人ではあるものの、彼に嘘をつかれたことはない。隠し事はあるだろうが、誘いも連絡も『する』と言えば必ずしてくれる。
だから、その言葉を信じて、すみれも慧にとっていい妻になろうと思った。
相変わらず会話は多くないが、ときどきは笑いかけてくれる。共に過ごす時間を重ねていけば、愛はなくとも穏やかな家庭を築くことはできるかもしれない。
そうなれれば、もう充分だ。
結婚したら、献身的に夫を支える妻になろう。御門にとっては不足かもしれないからこそ、慧の役に立てるように頑張りたい。
すみれがそんな決意したのが、真夏の夜のこと。
そのまま順調に結婚への準備が進んでいき、迎えた十一月。
すみれは、彼と結婚式と披露宴を行った。