政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
当日は、ずっと曇り空。まるで、天からの祝福がないように感じた。


ときに晴れ間が見えても、空はすぐにまたどんよりとした雲に覆われる。それがすみれの不安を描いているようで、なんだか皮肉みたいに思えた。


そんな中、結婚式は滞りなく進んでいく。
誓いのキスは、頬にされた。
なにも言われていなかったが、唇にされると思っていたすみれは拍子抜けして……。同時に、大きな壁も感じてしまう。


これまで身体の関係どころか、キスすらしていない。エスコート以外では、手すら繋いでいない。清々しいくらい清らかな関係だった。


だからこそ、今日は……結婚式の誓いのキスは、唇にされると思っていたのに……。
慧の中に確実な一線があることを、改めて痛感させられる。


心にまた影を落としたすみれを余所に、披露宴も和やかに執り行われていく。
美弥も出席してくれたが、ゆっくり話せる間などない。ただ、視界に彼女が入ってくると、少しだけホッとできた。


そうしてお開きになったあと、ドレスを脱ぐと魔法が解けたようだった。
けれど、ふたりは夫婦になり、これからずっと一緒に生きていく。婚姻届は今朝早くに出したため、すみれはこれで名実ともに彼の妻になったのだ。


「少し休んでから帰ろうか。さすがに疲れただろ」


この日の慧は、終始すみれを気遣っていた。いつも気を使われているが、婚約披露パーティーのときと同じように何度も声をかけてくれたのだ。


以前までなら、この演技に落ち込んだだろう。しかし、今は彼のこんな態度も素直に受け取れるようになった。

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