政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
時刻は、二十二時過ぎ。今夜も帰宅が遅い慧の体調が心配になるが、恐らく忙しいのだろう。


それでなくても、結婚式の前後は挨拶やお礼回りに時間を割いていた。一社員のすみれと違い、彼がスケジュールを調整するのは大変だったに違いない。


あのときの皺寄せがまだ来ているのだろうか。いずれにしても、朝早くから夜遅くまで家を空けている彼の身体が心配だった。


慧が帰宅したのは、それから三十分ほど経った頃。


「おかえりなさい」


すみれがリビングで出迎えると、彼は少し疲れた様子で「ただいま」と応えた。


心なしか、慧の頬が赤い。
お酒が入っていることはすぐにわかったが、彼はアルコールに強いはずだ。特に、婚約披露パーティーでは次々とお酒を注がれていたが、酔っている様子はなかった。


それなのに、顔に出ているのなら珍しくそれ以上に飲んだのだろう。すみれはすぐにウォーターサーバーで水を入れ、慧にグラスを差し出した。


「飲まれますか?」
「……ああ。悪い」


拒否されるかと思ったが、意外にも彼は素直にグラスを受け取った。すぐに水を飲んだ横顔は、やっぱり疲労感が滲んでいる。


「……大丈夫ですか?」
「少し飲まされただけだ。たいしたことじゃない」


大丈夫そうには見えないが、慧はすみれの助けを必要とはしていない。それはわかっているため、「そうだったんですね」としか返せなかった。


彼がキッチンにグラスを置き、リビングから出ていく。その数分後、シャワールームの方から物音が聞こえ、シャワーを浴びているのだとわかった。

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