政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
「会食があるから午後からしか時間が取れないが、ディナーの予約を入れてある。それまでにすみれの誕生日プレゼントを買いに行こう」


続けて投げかけられたのは、もっと予想もしていなかった言葉で……。すみれは驚きのあまり、すぐに言葉が出てこなかった。


「誕生日、覚えていてくださったんですか……」
「妻の誕生日を覚えていない夫がいるか? だいたい、去年も一緒に過ごしただろ」
「そう、ですけど……」


まさか、誕生日をきちんと覚えてくれているとは思わなかった。祝う価値がないと思われていたわけではなかったのだ。


嬉しいのに、きっと普通の夫婦なら当たり前のことなのに……。なんだか安堵感が芽生えて、泣きそうになってしまう。


返事ができずにいると、彼がすみれから視線を逸らした。


「別に嫌なら――」
「嫌じゃないです! びっくりしただけで、嫌なんてこと……!」


咄嗟に声を上げると、慧はすみれを見て眉を下げて微笑んだ。


「そうか」


彼が安堵しているように見えたのは、きっと気のせいに違いない。どこか嬉しそうに見えたのも……。


「じゃあ、二時頃に待ち合わせよう。なにが欲しいか考えておいて」
「はい!」


すみれが満面の笑みで答えると、慧は待ち合わせ場所を指定した。


その後は「おやすみ」と言い合い、それぞれ自室に戻ったけれど……。すみれは、喜びのあまり寝付けそうにない。
浮き立つ気持ちを抑え切れなくて、明日の服を考えながらウキウキしていた。

< 53 / 204 >

この作品をシェア

pagetop