政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
翌日は、清々しいほどの晴天だった。


まるで、すみれの誕生日を祝福してくれているようで、余計に心が弾む。待ち合わせ場所には、三十分も早く着いてしまった。


外は凍てつくように寒く、コートから覗く足が冷えていく。それなのに、寒さなんて気にならなかった。


「すみれ」


待ち合わせ時刻の十分前、目の前に車が停まり慧が降りてきた。


「もう着いてたのか。もしかして結構待ったんじゃないか?」
「いいえ。さっき着いたばかりですから」


すみれは笑顔で答えたが、彼は訝しんでいるようだ。


「その赤い鼻で言われても説得力はないな」
「えっ……!」


慌てて両手で鼻を隠したすみれに、慧が小さなため息をつく。


「どこかでコーヒーでも飲もう。買い物はすみれの身体を温めてからだ」
「すみません……」
「謝らなくていい。別にすみれは悪くないだろ」


助手席のドアを開けた彼は、すみれに座るように促す。エアコンが効いている車内は暖かく、それだけで冷えた身体に体温が戻ってくるようだった。


「あの……会食、お疲れ様でした」
「ああ」
「疲れてるはずなのに、時間を作ってくださってありがとうございます」
「こんなことでお礼なんて言わなくていい。むしろ、すみれはもっとわがままを言っても……」


そこまで話した慧が、言い淀むように口を閉ざす。程なくして信号が赤になり、車がゆっくりと停車した。


「いや、すみれはそういう人間じゃないな」


真意はわからないが、苦笑した彼の横顔はどこか優しい。まるで、すみれのことをよくわかっているような口ぶりでもあった。


再び車が走り出し、ラグジュアリーホテルの地下駐車場に入っていく。結局、さきほどの会話は途切れ、慧にエスコートされて車から降りた。

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