政略結婚ですが、クールな旦那様の溺愛が始まりました
「じゃあ……リクエストというか、お願いがあるんですが」
「お願い?」


息を小さく吐き、深呼吸をする。


「はい。プレゼントは慧さんが選んでくれませんか?」


勇気を出したすみれが一息に言い切ると、彼が目を小さく見開いた。


「俺が?」
「さっき、『もっとわがままを言っても』って言ってくださったので……。ダメでしょうか……?」
「……確かに言ったな。まあ、この程度でわがままと言えるのかは疑問だが」
「いいんですか?」


慧は一瞬だけ困ったような顔をしたけれど、息を小さく吐いたあとで頷いた。


「すみれの好みに合わなくても知らないが、いいよ」
「ありがとうございます!」


すみれがパッと笑顔になる。反して、彼はやっぱり少しだけ困ったような顔をした。


「参考までに訊くが、どういう系統のものが欲しいとかもないのか?」
「すみません……。本当になにもなくて……」


もともと、すみれはあまり物欲がない。ラグジュアリーブランドにもそこまで興味はなく、買い物は必要に応じてする程度だ。


プチプラのものは滅多に手に取らず、少しいいものを長く使うようにしている。そういった事情もあり、今すぐに欲しいものが思い浮かばなかった。


「とりあえず、服と靴でも見るか。色々回ってみよう」


その言い方だと、何軒か行くつもりなのだろう。
慧なりの誠意なのか、夫としての義務のつもりなのか……。どちらにしても、すみれの喜びは変わらなかった。


彼がエンジンをかけ、車を出す。そのまま表参道に向かい、ラグジュアリーブランドが立ち並ぶ大通りで駐車した。


「あの、慧さん」
「ん?」
「お店はもっとこう……手に取りやすいところでもよくて……」


六条の娘とはいえ、今のすみれは庶民とほとんど変わらない。実家はそこそこでも、年収も生活レベルも同年代の女性の平均程度なのだ。
それを暗に告げたが、慧がふっと唇の端だけを持ち上げた。

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